KURSAAL FLYERS『FIVE LIVE KURSAALS!』




[CBS:82253]
『FIVE LIVE KURSAALS』
A1. Original Model
A2. Yellow Sox
A3. Pocket Money
A4. Crusin' For Love
A5. The Sky's Falling In On Our Love
A6. Little Does She Know
B1. Street Of The Music
B2. TV Dinners
B3. Speedway
B4. Revolver
B5. On My Mind
B6. Anna (Go To Him)
B7. Friday On My Mind

Live at The Marquee Club, London on May 3rd/4th 1977

ウィル・バーチの著書『パブ・ロック革命』の原題は『No Sleep Till Canvey Island』といいます。キャンベイ・アイランドは言わずと知れたDR. FEELGOODの出身地ですが、当ブログを以前からご覧いただいている方なら「No Sleep〜」と聞いた時点で「極悪ライブ!」と叫んでしまうかもしれません。MOTORHEADの『NO SLEEP 'TIL HAMMERSMITH』をプロデュースしたのは『ACE OF SPADES』に引き続いてヴィック・メイル。メイルと言えば、DR. FEELGOODのデビュー・アルバム『DOWN BY THE JETTY』であの時代の空気までをも決定づけた辣腕です。レミーはHAWKWIND時代のライブ盤『SPACE RITUAL』で録音を手掛けた際のメイルの手腕を大きく評価していたと語っていますが、名盤の誉れ高きDR. FEELGOODのライブ盤『STUPIDITY』にもメイルの息がかかっており、R&Rバンドとしての矜持にこだわるレミーが意識していないわけがありません。

『殺人病棟』だの『極悪ライブ』だの、物騒な邦題のライブ盤に挟まれて、ウィル・バーチが所属していたKURSAAL FLYERSもまたメイルのプロデュースでライブ盤をリリースしています。残念(?)ながら危ない邦題は付いていないようですが、THE YARDBIRDSのデビュー・アルバムをもじって『FIVE LIVE KURSAALS!』と名付けられたそのライブ・アルバムは、皮肉なことにKURSAAL FLYERSの最後のアルバムとなります(のちに再編)。


画像はKURSAAL FLYERSの1977年5月3日及び4日のロンドンはマーキー・クラブでのライブを収録した4thアルバム『FIVE LIVE KURSAALS!』です。

画像は英CBSからリリースされたアナログ盤ですが、現在では前作『GOLDEN MILE』との2in1仕様のCDが発売されています。アナログ盤にはCDのブックレットには記載されていない歌詞カード(カバー曲を除く)も付属しているので、CDを持っていても手に入れる価値はあると思います。

タイトルに偽りなく5人組であった彼らも、結成からデビューまでの間は6人編成でした。デビュー直前にベースのデイヴ・ハットフィールドが脱退したものの、バンジョー奏者であったリッチー・ブルがベースに転向したので内訳は違えどオリジナル・メンバーであることには変わりはなかったわけです。その結束も前作にあたる3rdアルバム『GOLDEN MILE』を最後に、ギターのグレイム・ダグラスの脱退をもって終わりを告げています。そして本作をもってペダルスティール奏者のヴィック・コリンズも脱退。この年の末にはついにKURSAAL FLYERSは解散に至るわけで、人気番組「TOP OF THE POPS」にまで出演した前年の成功が嘘のような苦渋に満ちた一年を過ごしたことになります。

そんな最中にリリースされたライブ作品ですから、当時の浮足立った状況が映し出されていたとも不思議ではありません。ところが予想に反して本作のテンションは非常に高く、40分程度の収録時間ながら、ライブには定評があったというバンドのポテンシャルを十二分に伝えるものとなっています。未発表の新曲に始まり、これまでの3枚のスタジオ・アルバムからの代表曲、そして最新シングルからカバー曲までをも含んだ内容は、ロック・アーティストのライブ作品にありがちな「一つの区切り」的な印象を与えません。ともすれば表情が乏しくなりがちな新加入のバリー・マーティンのガレージ風味のギターも、本作の疾走感を決定づける需要な役割を担っています。おそらくはそのような効果を期待しての起用だったと思われます。

ただこれが当時の生々しい記録かというと少し違うような気がします。「Revolver」間奏の性急なメンバー紹介から、60年代ロックンロールメドレーに流れ込み、最後は余韻を断ち切るように「Thank you, Goodnight!」の叫びでぶつ切りにする構成にも顕著なように、周到に演じられたロックンロール一大絵巻といった感じすらするのです。例えるならば、フランク・ザッパの『CRUISING WITH RUBEN & THE JETS』や、近いところではロイ・ウッドの『INTRODUCING EDDY AND THE FALCONS』にはかなり影響を受けていたのではないでしょうか。

本作にも収録されたシングル「The Sky's Falling In On Our Love」は、このライブ収録後の6月にマフ・ウィンウッドのプロデュースでレコーディングされていますが、シンセサイザーを取り入れコーラスを重ねた賑々しいスタジオ・バージョンよりも、艶やかなペダルスティールも印象的なライブ・バージョンのほうがはるかに聴きごたえがあります。7月には自分の役割が減ったという理由でヴィック・コリンズが脱退、秋口にバンドは結果的に最後となるスタジオ・セッションに入ります。本作に収められている、スタジオよりも音を切り詰めた、一音一音の密度の濃いタイトな演奏を聴くにつれ、この体制のままヴィック・メイルのプロデュースで次作をレコーディングしていたらどうなっていたんだろうと考えてしまいます。しかしこのバンドの崩壊劇が、すでに新たなるバンドの萌芽を含んでいたのだからなんとも面白いところです。


ヴィック・メイルは89年に癌のため45歳の若さでこの世を去ります。その少し前、デビュー当時のGUNS N' ROSESがシングルのB面として断片的に発表したマーキーでのライブ音源にもメイルが関わっていると言われており、サイケデリックからパブ・ロック、NWOBHMからLAメタルに至るまでその魔力は脈々と伝播していました。一方前作『GOLDEN MILE』を手掛けたマイク・バットにも「ガンズ的こぼれ話」があり、彼が79年に発表したアルバム『TAROT SUITE』に収録されている「Introduction (The Journey of a Fool)」はオーストラリアのラジオ局「トリプルM」のテーマ曲として長らく使用されていたようなのですが、2010年の開局30周年にあたり、記念テーマ曲の作成に起用されたスラッシュがその曲を再演。そのレコーディング風景はYouTubeにもアップされているので興味がおありの方はぜひ。